迷子犬ドララを捜して①

 

「迷子犬ドララを捜して」

 

2005819日、沖縄中部にある自宅から愛犬ドララがいなくなった。

私がまだ小学校高学年の頃、駅前でバスに轢かれそうになっていたドララを妹と目撃し保護した。それからウチで暮らすことになり、仲良く成長を共にしてきた。

 

私は神奈川県出身で、沖縄に移住し数年後に結婚した。沖縄で私の両親と同居が決まり、ドララも一緒に沖縄へ移住した。慣れない土地でもドララは変わらず元気でいてくれた。

 

いつもと変わらない暑い夏の日、ドララを涼しい風が通る縁側の横に係留した。ドララは家族を見ながら遊んだり寝そべったりしていた。いつもと変わらない風景だった。しかし何かの理由でドララは忽然と庭から姿が消えてしまった。迷子になったときは18才の老犬だ。

 

弟のように思い一緒に育った犬が見知らぬ土地で迷子になった。こんなことは予想もしていなかったし、まず自分は何をすればいいのかさえ分からなかった。とにかく手当たり次第探しまわり、近所の方にも協力してもらってあちこちを昼夜問わず探した。その時初めて知ったのが動物愛護センターという存在だった。犬と長く暮らしていても保健所の存在は名前だけ聞いた事があるくらいで、その先にある殺処分など考えたこともなかった。

 

沖縄県の動物愛護センターは南城市にある。山の中で、ほとんどの人は自ら用事もなければ来ないような場所だ。私は犬たちの叫びともとれる悲痛な鳴き声を週に2回聞くことになった。当時センターでは犬の場合、捕獲を1日目とすると5日目の朝に殺処分される。そのため見逃しが一度でもあってはならないので絶対に5日以内毎に通い続けるしかない。毎回気が滅入り、迷子や捨てられた犬たちを見ることが本当に苦痛だった。

 

犬猫がいなくなったら飼い主はどうするか。まずは県動物愛護センターと警察署に届出をする。私の住む場所では行政が委託する業者にいったん犬猫を集める。その後、犬猫は決められた日に業者から動物愛護センターへ送られる。私は毎日近くの収集所へ通いながら、動物病院やスーパー、コンビニ、公民館、小学校や塾、とにかく人が集まるところにチラシを貼ってもらった。深夜はポスティングをした。仮に見つかった時すぐに報告とお礼を言えるようすべてメモしてまわった。県内の新聞の情報欄に毎週掲載してもらい、ラジオでも流してもらった。

 

私が一番悔やんでいることがある。それは迷子札の装着をしていなかった事だ。鑑札札は保管してあり、首輪に付けていなかった。名前と連絡先をつけていたら、すぐに見つかっていたかもしれない。そう思うと本当に後悔している。

 

愛護センターの職員さんから聞いたが、首輪の裏に書いている飼い主もいるそうだが、センターではそこまで確認しきれないのが現状だそうだ。マイクロチップも大切だ。マイクロチップとは固体識別登録のことで、動物病院で獣医さんに注射で首の後ろ辺りに入れてもらえる。その後、情報登録完了すればペットがいなくなった時に、例えば保護され、その保護主が動物病院で調べてくれたら飼い主が分かるシステムだ。マイクロチップが入っているから安心しセンターへ通わず連絡を待つ飼い主もいる。しかし愛護センターでは全ての犬猫のチェックは行えないそうだ。どこまで行われているかは各自治体によって違うと思うので、飼っている人は事前に確認しておいた方がいいと思う。

 

今では沖縄県の動物愛護センターのHP上で捕獲された犬の写真が見ることができる。(猫は未掲載)当時はそれが行われておらず、私が許可を得ていつも写真を撮っていた。一頭も見逃さないと心に決め、特定の期間だが、あるボランティアさんと連携しネットにアップしていた。それが一頭でも飼い主に繋がれば、と願いながら。

 

驚いたのはあまりに多い捕獲数だった。殺処分数が多いと聞くと、ブリーダーや持ち込みというイメージがあるが、沖縄の場合は捕獲されている犬猫も多い。

未だに処分数が人口比率にするとワーストの沖縄県。これは、捨て犬猫もいるが、行方不明になったペットの捜査を諦めてしまう人間が多いという事だ。諦められたペットはその後、多くは生きていけない。

私はドララを探している間、沢山の県民の方と話した。そこで犬猫を放し飼いする人がいかに多いか知った。こちらでは「いってらっしゃい散歩」といって早朝や夜になると色々な犬が外を歩いている。それまでは意識していなかったから分からなかったが、よく見てみると特に夜は一人歩きの犬も多いが、中には群れて歩く犬たちもいる。避妊去勢手術も一般化していないので当然数は増える。そして子犬は捨てられて捕獲されるという悪循環があった。

 

不妊手術の話になると、「自然ではない」「病気でもないのにメスを入れるのは可哀相」「費用が高い」などの意見が多かった。確かにその通りだとも思った。しかし、その思いが悲劇を生んでしまう。犬猫は野生動物ではない。既に人間の支配下にあり、その出産や処分も人間が関わっている動物だ。数をコントロールせずにいるために殺処分が多いのではないかと思う。

 

自然に背く行為と言うのも最もかもしれないが、生まれてくる数は決して一頭ではない。そして犬は十年以上生きる。何頭もの命に全責任をとれないのなら、やはり不妊手術は必要なのだと思う。

 

迷子犬たちの行く先は愛護センターだけではない。保護されるケースも多くある。この場合、保護主が警察や愛護センターに届出をしてくれたら飼い主に繋がる。しかし、私が知り合った方でそこまでやっている方はまだ少なかった。これには非常に落胆した。もしドララを保護した人がいたら、どこからか連絡が繋がるのではないか、という期待をもっていたからだ。いつかどこかでペットを保護する人もいるだろう。その時は必ず愛護センターや警察署に問い合わせをしてほしいと心から願う。

 

つづく